USB接続で使えるダイナミックマイクは少ない!
こちらの記事については、現在最もおすすめのダイナミックマイクはこちらになります↓
私はこれまで、お仕事で使うマイクにはUSB接続できるマイクをオススメしてきました。
ですが、マイクの種類にはコンデンサーマイク以外にも、ダイナミックマイクがあります。
販売されているマイクでUSB接続できるものは、そのほとんどがコンデンサーマイク。
一方少数ですが、ダイナミックマイクにもUSB接続できるものは存在します。
そんな少数のUSB接続できるダイナミックマイクは、果たしてどうなのか。
この記事では、ダイナミックマイク導入について、実際に使ってみた感想を含め、ポイントをご説明していきます。
多くのダイナミックマイクを選ぶときに必要なこと
パソコンにつないでダイナミックマイクを使うには、多くの場合オーディオインターフェイスの購入が必要です。
オーディオインターフェイスは、それ自体はパソコンのマザーボードという基板上にもあるのですが、ダイナミックマイクの多くは接続端子がXLR端子という形なので、そもそもパソコンにつなげること自体ができません。
パソコンにつないで使える形は、USB端子かミニプラグ端子になりますが、ミニプラグは音質の面で劣ります。XLR端子をミニプラグに変換するケーブルも探すとありますが、その場合は最終的にミニプラグの音質になってしまうので、せっかくのマイクの性能を生かしにくい状態になってしまいます。
では最初からオーディオインターフェイスを導入してしまえば、マイク選びの幅も広くなって、結果的に良いのではないか…と、お考えになった方もいらっしゃるかもしれません。
オーディオインターフェイスは選ぶにも使うにも、知識が必要
オーディオインターフェイスを選ぶ場合、調べると安いものも出てきますが、上をみると際限なく高額なものまであります。(数万円どころか、数十万円単位のものもあります…)
そんな中から使用目的に合致する機器を探すというのは、かなりの苦労があります。
そもそもオーディオインターフェイスについては、単にマイク越しに人がしゃべることだけが目的ではなく、音楽の収録やその編集などに用いることもあり、ものによっては使用目的に合わないケースも出てくることがあります。
どの機能が必要で、どの機能は不要なのか。
初めて導入するときに、その見極めはできるものでしょうか。
個人的な感想から言うと、それはなかなか難しいと思います。
なぜなら、「どんな機能があれば、自分が発信をするときに快適なのか」は、実際にその発信をしてみなければわからないからです。
当たり前のように感じられるかもしれませんが、だからこそネット上の情報をみただけで初心者が必要なオーディオインターフェイスを選び、使っていくのは難しいものだと思います。
たとえば一例として。
あるダイナミックマイクをオーディオインターフェイスに接続して利用したところ、USB接続中であれば使えたミュートボタンが、XLR接続でオーディオインターフェイスに接続すると機能しなくなってしまった。
さらにオーディオインターフェイス本体にもミュートボタンが無いので、一旦音を消すにはとにかく使用しているネットのツール側でミュートにするという作業が必要になった。
上記は実際に私が経験したことの1つです。
その当時はマイクこそ複数本試してみたことがあったものの、オーディオインターフェイスについては知識が不足していて、十数時間もかけて調べて購入した一台だったのに、マイクの機能的な関係上で便利なミュートボタンが使えなくなる…という事態が生じました。
このとき私が購入したオーディオインターフェイスは、当時4万円ほど。
けっこう、ショックに感じた部分ではありました。
もちろん、オーディオインターフェイスのすべてにミュート機能がないわけではありません。
一部の機器にはミュート機能が取り付けられているものもあります。ただし、探してみると思いのほか少ないようにも感じます。
こういう判断をマイク選びの初心者の方ができるかどうかは、やはり難しいと思っています。
だからこそ、初心者の方にはまずUSB接続で使えるマイクを選んでいただいて、
そこから使い慣れてたあと、さらに必要が生じた場合に新しい音響機器を使ってみるというステップを踏むことが、結果として無駄な出資を防ぐことになると思います。
ダイナミックマイクならではの特性もある
ダイナミックマイクは、コンデンサーマイクに比べてシンプルな構造になっています。
その機構の一番の違いは、声や音の振動を電気信号に変換するパーツにあります。
ダイナミックマイクでは、空気の振動が振動版というパーツにあたることで、その振動でコイルを動かし電気信号に変えていくという機構をしています。
一方でコンデンサーマイクでは、電子回路に電気を蓄えておくことでそれを利用して電気信号に変換するのですが、その際に電気を蓄えるパーツ部分が薄い膜で覆われていて、こうした機器が湿気や振動に対して弱いという側面があります。
そのためコンデンサーマイクは長く使わない場合、乾燥剤などと一緒に袋に入れて保管するなど、保管方法に気を配る必要もあります。
この点では、ダイナミックマイクは電子回路の故障を心配することなく使えるという利点があります。
ダイナミックマイクはコンデンサーマイクよりも構造がシンプルなので、環境の影響を受けにくく、コンデンサーマイクより壊れにくいのです。
ダイナミックマイクの特徴は他にも、電子的な部品などが少ないことで良い意味でマイクの感度が抑えられているため、電気ノイズが入りにくく、パ行やバ行などの息があたるときのノイズもコンデンサーマイクより入りにくいといわれています。
ただし、マイクの感度が抑えられていることで、適正な距離で使わないと音量が小さく聴こえてしまったり、あるいは音楽など楽器の収録などにはあまり向かないという面もあります。
この点は言い換えると、人の声やボーカルを収録するときに向いているとも評価できます。
こうしたマイクごとの特性をよく理解していくと、より目的にあったマイクが選べるようになります。
実際にUSB接続できるダイナミックマイク
ではここから、実際にUSB接続できるタイプのダイナミックマイクで私が使ったことのあるものを2つ、ご紹介したいと思います。
価格的に大きく差のある商品ですので、機能性の差は色々と出てきますが、ご参考になれば幸いです。
オーディオテクニカ ATR-2100X
初めにご紹介するのは、オーディオテクニカが出しているATR-2100Xです。
ご覧のように、サイズ感は本体だけならカラオケなどにあるマイクより少し短いですが、スタンドを付けると500mlのペットボトルより大きいです。
ダイナミックマイクの特製として、音を拾う範囲がコンデンサーマイクより狭く、距離や角度によっても聞こえ方に違いが出やすいです。
ATR-2100Xは、主に正面の音声を拾うことに特化した単一指向性のマイクです。
※ヘッドホン等推奨
マイク正面以外からの音声はもちろんゼロではありませんが、コンデンサーマイクよりも入ってくる音量は小さい印象です。
マイク底部には、
・USB-typeC端子の接続口
・XLR端子の接続口
・イヤホンジャック
・イヤホン音量コントロールのためのツマミ
があります。
イヤホン音量コントロールのツマミについては、マイクにヘッドホンを直接つないで自分の声を自分で聴く場合にのみ使えます。
相手側に聴こえる音量を操作することはできないので、この点は要注意です。
マイク本体にはON/OFFの切り替えスイッチのみがついています。
スイッチをOFFにするとミュート状態になります。
ATR-2100Xのポイントとしては
メリット:
・USB接続可能で取扱いが簡単
・USB接続・XLR接続の両方に対応している
・マイクのON/OFF切り替えがスイッチ1つで行える
・人の声の周波数帯を拾うのに適した設定となっているので、通話に向いている
デメリット:
・機能の幅がそれほど多くない割に、ある程度値段がする
・スタンドと一体で使うためには、スペースがある程度必要
・マイクアームに接続して使う場合、接続のための部品を購入する必要がある
音質は、距離が合っているとなかなか良いと思います。
ただし実質的には音声ミュート機能以外はないので、価格に対して多機能とは言い難い面があります。
同じようにシンプルなマイクという点では、別記事でご紹介しているHyperX SoloCastと比べてみていただくとその差がわかるかもしれません。
USB接続ができるダイナミックマイク自体、数が少ないので、似たような価格帯のコンデンサーマイクと比べてみて、ご検討されるのがいいように思います。
SHURE MV7
続いては、SHUREから発売されているMV7をご紹介します。
MV7はUSB接続可能なダイナミックマイクで、上記のATR-2100Xと同様に単一指向性のマイクです。
一方で、価格はUSBで使えるマイクとしては高価な部類に入ります。
それではこれより、実際にMV7の機能面についてお話ししていきたいと思います。
MV7は、
・音声ミュート機能
・ゲイン調整機能
・マイクモニター(ヘッドホンで自分の声を聴く機能)の切り替えボタン
・USB接続だけでなく、XRL端子の接続にも対応
・専用ソフトを使用すれば、簡易のイコライザ、突然の大音量の際に音割れを防ぐリミッター、小さい音量の際にサポートしてくれるコンプレッサーなどの機能が使える
・専用ソフトでは、オート機能に切り替えることで近い距離だけでなく、やや離れた位置からの声も安定して拾ってくれるニア/ファーの設定切り替え、声の高さに合わせた領域を拾いやすくする設定などができる
といった、多機能マイクになります。
実際の音質について
※ヘッドホン推奨
お聴きいただくとわかるかと思いますが、さすが音質がいいですね。
側面や後方からの音もかなり拾いにくいので、音質の良さと周囲の雑音の入りにくさを、ある程度両立させてくれるマイクだと思います。
マイク本体には、マイクの音量に関するゲイン調整ボタンと、音声ミュートボタン、またマイクにヘッドホンやイヤホンを差し込んで使う場合、PC側の音声とマイク側の自分の声それぞれが聴こえてくる比率を変えるための、モニターミックス音量調整などがあります。
またこのマイクは、USB接続で使う際に、パソコンなどで専用ソフトを使用して、様々な機能を設定することができます。
オートモードで使う場合:
・近距離の音声を自動で聞こえやすくしてくれるニアモード
・やや離れた距離からの声も自動で聞こえやすくしてくれるファーモード
・普段話すときの声の高さに応じて、暗い/ナチュラル/明るいの3つに設定を変えると、その設定にあった音域を特にしっかり拾ってくれるよう自動調整される
マニュアルモードで使う場合:
・マイクミュートのON/OFF切り替え
・マイク感度を変更するゲイン調整
・イヤホンをマイクに接続して使う場合、マイク側の音声/PC側の音声それぞれの聴こえてくる音量の比率を調整できるモニターミックス
・音の聴こえ方を4種類から選んで簡単に調整できる、簡易イコライザ―
・急に大きな声や大きな音が入ってしまったとき、音割れを防止することができるリミッタ
・マイクに入ってくる音量を4段階から選べ、ある程度制御できるようになるコンプレッサー
上記のように、複数の機能を設定して使うことができます。
なお、このマイクには一部のノイズを軽減するポップガードと、ショックマウントが初期から付けられています。
その一方でスタンドやマイクアームが付属しないため、利用にあたってはそれらを別途購入することが必要となります。
以上、機能面をまとめると以下のとおり。
メリット:
・USB接続で使用できるので取扱いが簡単
・XLR接続にも対応しているので、将来的にも多様な使い方ができる
・ダイナミックマイクなので周囲の雑音を比較的拾いにくい
・適正距離であれば音質がよくクリアに聴こえる
・ゲイン調整、音声ミュート、モニターミックスなどの設定が、本体のボタンを押すことで専用ソフトを開かなくても設定できる
・専用ソフトを使用することで、さらに細密に設定を行うことができる。
・ノイズ防止のポップガードが最初から付属している
・防振装置であるショックマウントが最初から付属している
デメリット:
・USB接続できるマイクとしては、高価な部類になる
・購入時では自立できるようになっていないため、マイクスタンドかマイクアームを用意することが必須
・USB接続で使用しない(XLRケーブル接続で使用する)場合には、ゲイン調整/音声ミュート/モニターミックスなどのいずれの機能も使えなくなる
USB接続で使用している場合には、音質もよく多機能なダイナミックマイクマイクと言えると思います。
ダイナミックマイクの特徴として、周囲の環境音など雑音を拾いにくいところがよく生かせるマイクでもあると思います。
ただし、オーディオインターフェースにつないでお使いになる場合は、ゲイン調整や音声ミュート機能が使えないというデメリットも生じてきます。(もっとも、それらの制御はオーディオインターフェースでやれるという面もありますが)
MV7は、私も現在メインで使うようになったマイクですので、オススメの1つです。
まとめ
いかがでしたか?
ダイナミックマイクには、コンデンサーマイクとはまた違った魅力があります。
メリット:
・機械としてはコンデンサーマイクより壊れにくいので、安心して使える・音域としては人の声を拾うのに比較的向いているので、会話用途に向いたマイク
・音を拾う範囲が絞られているものが多いので、周囲の雑音などが比較的入りにくい
・高性能なものであれば、コンデンサーマイクにも負けないくらいの設定切り替えが行える
デメリット:
・マイクから離れたときに音量が急に小さくなる傾向があるので、適切な距離で使用する必要がある
・同一性能のマイクを選ぶとなったとき、コンデンサーマイクよりも値段が高くなる傾向がある
・ゲイン調整など、あると便利な機能がついているものが少ない
・USB接続できるダイナミックマイクは、選べる種類が少ない
ダイナミックマイクを導入したいという方は、これらの特徴をよくご理解の上で選択していただくと、その後の満足度が違ってくるのではと思います。
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