ノイズ軽減のポップフィルターって、必要!?
この記事では、現在私が所有しているHyperX Shield マイクポップフィルターのレビューを中心に、ポップフィルターの効果について説明していきます。
ポップフィルターを実際に使ってみた場合との差があるのかを、ぜひ試聴していただけたらと思います。
歌手の映像でよくみる、黒いアレの役割
ポップフィルターもしくはポップガードと呼ばれる製品があります。
テレビや動画で、歌手の方やナレーションをする方のマイクの前にくっついている、黒い円板のようなものをご覧になったことがあるかと思いますが、その製品を指して呼ぶときの名称です。
ポップガードと呼ばれることのほうが多いかもしれませんが、特に明確な定義がないようなので、ここではポップフィルターと呼ぶことにします。
このポップフィルターの役割とは何でしょうか。
ポップフィルターが防ごうとしているのは、ポップノイズとよばれる雑音のことです。
ポップノイズは「バビブベボ」や「パピプペポ」などの破裂音と呼ばれる発声の際に、強い息がマイクに当たると生じて、マイクに「ボフッ」っといった感じの雑音が入ります。
上記のバ行・パ行に限らず、ハ行やタ行の発生でも生じることもあり、特に感度がよいコンデンサーマイクを使用していると、比較的よくマイクが拾っているノイズの1つです。
ポップフィルターは、そうした発声時に生じた風がマイクに当たらないように、事前に防風として置いてある機材のことなのです。
ポップノイズを減らすことはできる?
ポップノイズを完璧になくすことは恐らく不可能だと思いますが、話者の発声技術によっては、発生頻度を減らすことができると言います。
具体的には、発声時の息の量を適切にコントロールしたり、滑舌を改善して声の通りを良くしたり、あとマイクとの距離を適切なものにするなどの取り組みで、その頻度を減らすことが可能です。
ただ、マイクの距離の修正ならいざ知らず、息の量のコントロールや滑舌のトレーニングというのは、一朝一夕に身につくものではありません。
それこそ適切なトレーニングを受けなければ、改善には相当な時間を要することになると思われます。
そんな中で、ある程度手軽に物理的にポップノイズを消してくれる道具として存在するのが、ポップフィルターです。
息のほかにも防いでいるものがある
ポップフィルターは、破裂音などの発声時に生じるノイズからマイクを守るだけでなく、もう1つマイクを物理的に保護する機能も備わっています。
それは「唾液」…ツバから生じるマイクへのダメージです。
意外に思われた方もあるかもしれませんが、実はコンデンサーマイクが苦手とする湿気と密接に関係しているのが、息の中に含まれる水分であり、発声時に知らずに飛んでいるツバなのです。
ツバがコンデンサーマイクにダメージを与える構造とは
少し難しい話になるかもしれませんが、お手入れにも関係することなので、どうしてツバがマイクに良くないのかをお話しします。
コンデンサーマイクは内部に様々な電子部品が取り付けられており、また声という空気の振動を電気信号に変換する操作の上でも、ダイナミックマイクに比べて繊細な構造でなされています。
その声の振動を電気信号に変換する部品の部分には、息やツバを介して水滴が付着することがあり、その水滴からカビが生えることが、マイクの音質低下やノイズ発声の原因となることがあるのです。
薄くて細やかな金属部品であるため、多少のカビでも影響することがあるため、高価なコンデンサーマイクなどでは収納するための専用ボックスなどもあるそうです。
それほどまでに、湿気に弱いとされるコンデンサーマイク。
ここまで考えれば、雑菌も含まれるツバがコンデンサーマイクの大敵であることは、容易に想像がつきます。
さらに、ツバだけでなく息そのものの中にも、湿気のもとになる水分は含まれています。
口元近くに手の平をもっていって、しばらくハーハーと息をかけてみたら、少ししっとりしますよね?
それと同じ原理が、マイクの中でも起こりえるのです。
もし、むき出しの金属に繰り返し息を吹きかけ続けたらどうなっていくのか。
ポップフィルターは、そうした機械的なダメージからマイクを守るという役目も持っている機材になります。
※コンデンサーマイクをそうした湿気から守るという観点では、もし使わない期間がある場合、乾燥剤などと一緒に除湿をしてあげたうえで、寒暖差や湿度が高い場所を避けて保管する…といった対策も、長持ちさせるために効果的ですので、この際にぜひ覚えておいてください。
ポップフィルターの種類
ポップフィルターを分類するには、素材と取り付け方式の2つの要素があります。それぞれ比較してみましょう。
素材
ナイロンや布製のものと、金属製のものとがあります。
ナイロン・布などの素材のものについては、
・比較的安価で手に入る
・色々なメーカーが出している(サイズも幅広い)
・洗って繰り返し使うのには向いていない
・高温領域が吸収されて、少しこもった音になるといわれている
などの特徴があります。
一方で金属製のものでは、
・ナイロンや布など繊維製品に比べると高い
・製造しているメーカーの数が繊維製品よりも少ない
・繰り返し洗って使える
・音が吸収されたりする影響は少ない
などの特徴があります。
特に金属製で有名メーカーの製品となると、1万円を超えている(マイク全体を覆うタイプなどでは、3~4万円台の製品も…)のですが、洗って繰り返し使える面などを考えたら、1万円台ならコスパとしてはそこまで大きな差にならないかもしれません。
取り付け方式
取り付け方の種類で分類すると、
・クランプ式
・クリップ式
・マイク取り付け式
・ショックマウント取り付け式
などに分類できます。
クランプ式は、マイクアームなどでもおなじみの、ネジを締めて固定部の圧力で安定させる取り付け方法です。
比較的幅広く取り付け可能で、このタイプが最も多く流通しているかもしれません。
クリップ式は、文字通りクリップ(洗濯ばさみのような部分)で挟んで固定する方法です。
固定する手間は最も少ないですが、固定できる場所を意外と選ぶことがあり、マイクアームの種類によっては取り付けられない場合もあります。
マイク取り付け式は、直接マイクに被せるなどして使う方法です。
マイクに簡単に被せるだけのものから、ポップガード部分をゴムなどでマイクに押さえつけて固定するもの、さらには全体をすっぽりと覆うものまであります。
しっかりと覆うことから効果は高いようですが、マイクに密着状態となるため、音がこもったり、あるいは違うノイズを拾ってしまうこともあるようです。
ショックマウント取り付け式は、マイクに直接被せたりするのではなく、ショックマウントの部分にはめ込むなどして使える方法の製品です。
それぞれのメーカーが専用の製品としてだしている場合がほとんどですが、そのため取り付けた際の安定感に優れたものが多いです。
以上が、ポップガードの分類についての話となります。
イメージは持てたでしょうか?
ここからは、私がオススメしているHyperX QuadCast S に専用で付けられるShield Microphone Pop Filterについて、ご説明していきたいと思います!
HyperX Shield Microphone Pop Filter
HyperX社より2023年に発売された、Shield Microphone Pop Filter。
中身はグースネックのアーム部分とクランプ式の固定部がついていますが、QuadCastとQuadCast S のショックマウントであれば、どちらでも直接はめ込んで使える仕様となっています。
実際に装着してみた画像がこちら。
さすが専用だけあって、本当にしっかりとはまって安定します。
ロゴも含めて統一感がありますよね。
縦長で大きなマイクなので、なかなか満足いく形でマイクをカバーしてくれるポップフィルターがなかったのですが、公式より満を持して登場してくれたので、マイクからはみ出す部分も少なくて見た目も整います。
また、金属部分もかなり目の細かな作りなので、唾液の付着防止の役目もしっかりと果たしてくれそうです。
では、肝心の装着の有無によって、聞こえ方はどう変化するのでしょうか。
以下が聴こえ方のサンプルになります。
まずは、ポップフィルターなし
続いて、ポップフィルターあり
…いかがでしょうか。
違いが解りましたか?
私にはほとんど、差がわかりませんでした。
パ行の音について、若干ノイズ量が減ったような気がする…かな…くらいの変化です。
もっと音響環境が整った方に聞き取って頂けたら、差が解るのかもしれませんが…。
というわけで、このときの音にまつわるテストでは明確な差はありませんでしたが、ポップフィルターのもう1つの役割である、唾液などからマイク本体を守るという役割については確実に果たせます。
そういう安心感をもってマイクを使えるという点で、導入した価値はありました。
ポップフィルターの効果を感じるかどうかは、人それぞれ話し方のスキルやマイクの使用環境でも異なります。
ただ、せっかくのマイクを長く使っていきたいと思われた時には、ぜひ一度導入をご検討してみてください。
あなたの声を伝えてくれる相棒を、護ってくれる機材ですから。